今日もガサガサ日和Vol.62 獲れた生き物から川を想像する

2019年6月5日(更新日:2019年6月5日)
ガサガサ

先日のガサガサでは、魚に限らず色々な生き物が獲れました。魚だけじゃない、というところがガサガサの面白さですよね。

今回はちょっと趣向を変えて、今回獲れた生き物を見ながら、私が今回遊んだ川の姿を想像してもらおうと思います。

ニホンイシガメの繁殖できる川とは

まずはニホンイシガメ。

子ガメは最高にキュートですね。まだ生まれて間もない感じで2歳くらいでしょうか。という事はこの川で繁殖していると思われます。イシガメは水辺の土手などに穴を掘って産卵するため、水辺から土で出来た陸地までが遮断されておらず、往き来が容易であることがわかります。

少なくとも、コンクリート護岸のみによって外界と隔離された川ではない。堤防の中に土手が多く形成されているか、外界とは緩い勾配で繋がっていると言えますね。また、どちらかと言えば河川の中上流側に生息するため、都市河川ではない。けれどカメは泳ぎが得意ではないのであまり流れの速い川ではない。よって、田舎のゆるやかに流れる、緑に囲まれた川、と言えましょう。

モクズガニの生息からわかること

次はモクズガニ。

多くの人はサワガニは見知っていてもモクズガニを出すと仰天します。こんなデカいカニが川にいるのかと。今回捕まえた個体の三倍くらいの大きさまでは普通にいます。

サワガニは一生を淡水で過ごす珍しいカニですが、モクズガニは海まで降って産卵します。産まれた子ガニはまた河川に上がってきます。という事は、河川と海が繋がっていなければなりません。大きなダムや堰で断絶されていると河川と海との行き来ができないからです。

実は生き物の多くはひとところにずっといるわけではなく、河川内、河川と海とを回遊しています。自由に行き来できないと多くの生き物が住めないと言えます。ですから、モクズガニが見つかるという事は、川が水の流れとして断絶されていない健康な状態といえるのです。

ドンコという魚は自然豊かな川に住む

お次はドンコ。

夜行性で昼間は隠れているので、岩や石、流木や抽水植物など川の中に隠れる場所が必要な魚です。また、大きな石の下に部屋を作って産卵しますから、それだけでもコンクリートでのっぺらな川ではないことがわかります。かなり色んな景観、障害物がある川ですね。

そして、低い水温を好むので川の中上流ということがわかり、あまり泳ぎが上手くないので、流れが緩やかな場所ということもわかるのです。あるいは、流れを緩やかにさせる障害物が多くあるか。さらに、泥質より砂礫を好むので川底の様子も想像できます。体色が砂礫にあった保護色になってますよね。

食生は完全な肉食性。口が大きいので自分の体ほどもある魚だってたべちゃいます。大きくなると20センチくらいに成長しますからその巨体を維持できるほどのエサがないと生きていけません。ですから、ドンコの棲む川はエサとなる他の生き物も豊富に棲む自然豊かな川ということもわかりますね。

獲れた生き物から見える風景

このように「イシガメが獲れた」「ドンコが獲れた」と聞くだけで、その人が遊んだ川の風景がぼんやり見えてくるものです。

今回遊んだ川は、あまり大きなダムや堰のない上流寄りの中流の田舎で、水際まで草が生い茂った土手や陸地が広がっており、川底は砂礫で流れはゆるやか、大きな石などがゴロゴロしていて抽水植物※などの水草も豊富、小魚やエビなど生き物の量が多い川、ということが言えるのです。(※抽水植物:ハスやガマなど、水深の浅い場所に生える水草。根は水底の土壌の中にあり、茎や葉が水面の上に伸びる。)

さらに言えば、エサが豊富という事は、水草が繁茂しているという事は、、などと連想は無限に続いていきます。つまり自然とは、そのような全ての「連続」で成り立っているのが自然なのであって、この連想が、だから連続が途絶えるような自然はまさに不自然と言えましょう。

生き物から獲れた場所やその裏に連なる連続を推測していく。

なんだか謎解きみたいで面白いですよね。これからの川遊びシーズン、友人と獲れた生き物を見せ合って、お互いにどんな川で遊んできたのか当てっこするのも面白いかもしれません。

とは言いつつ「なぜこんなところにこんな生き物が!?」なんてこともよくあって、だからガサガサはやめられないのです。

伊藤 匠

関連記事

スポンサードリンク




PAGE TOP