スタバがストローを廃止する理由 ~海洋ごみ問題を考える~

2018年8月31日(更新日:2018年9月14日)
トピックス

まだまだ残暑が続いていますが、こんな時こそ川遊び。

お手軽に川遊びスポットを探せる川遊びマップで、お近くの川を探してLet’s go!

川で泳いだり、滝つぼに飛び込んだり、ペットと一緒に水遊びしたり。沢登りやシャワークライミング、テンカラ釣りもいいですよね。キャンプで川遊び、川辺でバーベキュー。川は無限の遊び場です!

そして、川で楽しく遊ぶついでに、ちょっとだけごみ拾いしてみるのはどうでしょう。

1本のストローを拾うだけでもいいんです。その行動が、海の生物たちを救うかも…。

2018年9月15日にもWorld Cleunup Dayとして全世界でクリーンアップ実施しますので、もしご参加頂けるのであれば近くの場所で参加してみてください。

スタバもマックもストロー廃止

今年の夏、スターバックスコーヒーとマクドナルドが相次いでプラスチック製ストローの廃止を決定したことがニュースになりました。

カフェやレストランで必ずといっていいほど出てくるプラスチック製ストロー。

利用者にとって、ストローがなくなるのは不便です。しかし、今、こうした使い捨てのプラスチック製品を廃止するのが、世界的な流れなのです。

いったい、なぜでしょうか?

その理由は、意外かもしれませんが、「海洋ごみ」にあるのです。

この海洋ごみの7割は川から流れ出たものだという調査データがあることから、今回、『川遊びマップ』でこの問題について取り上げることにしました。

以下は、河川/海洋ごみ問題の解決に取り組まれている、NPO法人荒川クリーンエイド・フォーラムの今村和志(いまむら かずゆき)氏から寄稿された記事を、同氏の監修の下、川遊びマップで編集したものです。

海ごみの状況

海洋ごみ問題の難しさ

NHKクローズアップ現代でもとりあげられた『海洋ごみ問題』。

毎年世界から800万トンとも言われる海洋ごみが海へ流出しているとの報告もあります(Jambeck, et.al.,2015)。

800万トンと聞いてもあまりピンとこないかもしれませんが、毎日2万トン強、10秒毎にごみ収集車1台分のごみが海洋に投棄されている計算になります。

海洋ごみ問題の難しいところは越境問題であることです。日本1国がどれだけ努力しても、それだけではどうにもなりません。

環境省の調査によれば日本列島に漂着する海岸ごみの量は31~58万トン。その中には、海底に沈むものもあれば海洋に流出し、洋上を漂い続けるものもあるでしょう。

海洋ごみ排出量のワースト20のうち13ヵ国がアジアの国で、最も多かったのは中国、次にインドネシア、フィリピン、ベトナム、スリランカと続いています。また、米国も20位にランクインしています(Jambeck, et.al.,2015)。

こうしたことから、国際的な取組みが必要なことがよく理解できます。

一方で、日本はワースト20には入っていませんが、年間6万トン程度の海洋ごみを発生させており、その影響は決して軽視できるものではありません。

海外から漂着したゴミ

太平洋ごみベルト

「太平洋ごみベルト」という言葉を聞いたことはないでしょうか?

太平洋ごみベルトは世界でもっとも多くの海洋ごみが漂う海域と言われています。

北太平洋のほぼ中央に位置し、その面積はなんと日本の面積の2倍とも4倍とも言われています。

そこに漂うごみのうちプラスチック製のものの多くは、紫外線や風波の影響で時間とともに細かく砕かれ5mm以下となったいわゆる“マイクロプラスチック”です。

マイクロプラスチック

このマイクロプラスチックは、ポリ塩化ビフェニル(PCBs)やDDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)等と言った有害物質を吸着しやすい性質を有しており、生態系への影響など心配の種は尽きません。

宮古島の海岸ごみ

ウミガメとポリ袋 意外な現実

ところで皆さん、ウミガメが海洋に漂うポリ袋をクラゲと間違えて食べて死んでしまっていると聞いたことがありませんか?

ところが、意外なことに、それは事実とは言えないようです。

私の知り合いのウミガメ仲間や、死んだウミガメの解剖調査を専門的に行っているNPOによると、ポリ袋等の誤飲が死に直結している可能性はかなり低いようです。

何らかの理由で死んで砂浜に漂着したウミガメの胃腸内を解剖してみると、多くの個体から人工系のごみが見つかるのは事実です。

しかし、それが消化器官に詰まるなど直接的な死因になることはほとんどないようです。

ウミガメは総排泄腔と言って、直腸・排尿口・生殖口を兼ねる器官があり、単純に言えばお尻の穴が大きいからかもしれません。

ただし、だからといって問題がない、ということにはなりません。それは次の章でお話します。

海洋ごみの怖さ

海洋ごみは、ウミガメ以外の海の生き物にも大きな影響を与えています。

海鳥が餌と間違えてプラスチックごみを食べてしまう、あるいは海ごみに絡まって死んでしまうという問題は年々増加しています。

今年の5月には、マレーシア国境近くのタイの運河で衰弱したクジラが救助されましたが、5日後に死亡しました。

タイ海洋沿岸資源局が今年の6月2日にフェイスブック上で明らかにしたところによると、胃の中からは80枚ものプラスチック袋が出てきたそうです。これが胃に詰まり、エサを食べられなかったとみられています。

また、NHKクローズアップ現代では、マイクロプラスチックに含まれる有害物質が食物連鎖によって濃縮されていくという懸念を取り上げています。

小魚がマイクロプラスチックを体内に取り込むと、有害物質が脂肪や肝臓に蓄積されます。そして、その小魚を食べる魚に有害物質がさらに蓄積され…高濃度に濃縮されていく可能性があるのです。

現在、マイクロプラスチックそのものや有害化学物質の影響についてはまだ研究途上です。

しかし、「予防原則」といって、”今はまだ大きな問題は生じていないとしても将来的には大きな問題に発展する可能性があること”として、科学的に因果関係が十分証明されない状況ではありますが、その対処が議論されており、動向が注目視されています。

川からの影響

海洋ごみはどこから来るか

さて、そんな海洋ごみの由来はどこからかと言えば、その6~8割が陸域であることはあまり知られていません。

ほとんどのごみは街から発生したもので、用排水路等を通して川を伝って海へとやってきています。

例えば、ここ荒川の流域人口は1千万人以上と日本有数。その1千万人のうちの数%の人のごみが何らかの理由で逸出し、河川敷にたまるとこうなります。

荒川下流エリア

単位面積当たりのプラスチックボトルから推算したところ、このエリアには300平方メートル当たり推定5万本のプラスチックボトルが漂着していました。

「いつかは自然に分解されるから大丈夫」といった話もたまに聞くのですが、その”いつか”はアメリカ海洋気象庁(NOAA)によれば450年以上とも言われています。

なお、ここでの分解は水と二酸化炭素にまで分解されることを意味しますが、何気なくポイ捨てしたごみがまさかそんなことになるとは多くの人が知らないのです。

また、ポイ捨てしない人には関係なさそうな海洋ごみ問題ですが、タイヤのゴム、塗料、化学繊維の衣服などなど、マイクロプラスチックは様々なところから発生します。日本国民のほぼ全てが関わっていると言っても過言ではありません。

荒川から東京湾へ大量の…

私が一番の危機感を感じたのは、荒川の河口で土壌を観察した際でした。

土の中にプラスチック破片が大量に混ざっており、その割合(容積比)が1対1の状態になっていることを目の当たりにしました。

正直、「終わってるな」と思いました。荒川は東京湾に大量のマイクロプラスチックを送り出していることを確信した瞬間です。

土にまみれたマイクロプラスチック

私たちの生活と海洋ごみ

ごみ問題を抱えているのは、荒川だけではありません。
日本全国各地の川で、食品トレイやペットボトルなどのプラスチックごみの増加が問題となっています。

食品トレイやペットボトル、使い捨てのスプーンやレジ袋などの普及で、私たちの生活はいつのまにか便利になりました。

しかし、その一方で多くのプラスチックごみが排出され、河川や海に流れ込むという問題が起きています。決して他人事ではないのです。

河川/海洋ごみ問題の改善のために

荒川では1994年から25年以上「荒川クリーンエイド」という河川清掃の取組みを、国土交通省 関東地方整備局 荒川下流河川事務所と市民が連携して実施しています。

近年では毎年1万人以上のボランティアが活動をしていますが、河川ごみを根絶するにはまだまだ時間がかかりそうです。

荒川に流れ込むこみ

また、ボランティアで清掃してくれる人のほとんどが普段から“ポイ捨てをしない人”です。本当にこの現状を見て欲しい“ポイ捨てする人”には伝わっていないといった課題があります。

プラスチックとの付き合い方を見直す


最近、スターバックスや大手外食レストラングループがプラスチック製のストローの(段階的な)廃止を検討しているといったニュースを耳にした方も多いと思います。

いわゆるワンユーズ(使い捨て)プラスチック製品の使用量を減らすことで、環境中に出てしまうことを抑制しようというものです。

ごみはちゃんと捨てたはずでも動物に荒らされ、それが風や雨で排水路から川へそして海へと運ばれるかもしれません。

上は名古屋市内で撮影した写真ですが、大変な散らかりようです。強風の日などはこのまま川や海へと運ばれることでしょう。

もっとも、約1年後には下の写真のようにケージで対策がとられている場所もありました。

こうしたケージは、カラスなどに荒らされないというだけでなく、風によってプラスチックごみが散乱するのを防ぐ効果も期待できます。このような対策が各地で進められていくことが大切です。

ひとり一人ができることは?

日本では年間300億枚のレジ袋、300億本のPETボトルが利用されています。国民1人当たりで年間300程度を使っている計算になります。

コンビニでもらうレジ袋。商品を購入後、中身を出してすぐごみ箱に捨てた場合、その使用時間は早ければ数十秒ということもあります。

皆さんの家にあるエコバッグ、ちゃんと使っていますか?エコバッグを作るのに使用される原材料は最低10回分のレジ袋に相当するとも言われています。(レジ袋1枚当たり5g、エコバッグ1つ当たり50gとして)

つまり最低でも10回以上使わなければ(レジ袋を辞退しなければ)その収支は合わないことになります。マイボトルもそうですが、ちゃんと使うことが大切です。

河川/海洋ごみ問題は”拾うだけでは解決しない”問題です。

しかし、かと言って、拾わなければマイクロプラスチック化して、巡り巡って私たちの食卓に登場します。

食卓塩の中にもマイクロプラスチックが混入しているというニュースに、多くの人が驚かさせられたのではないかと思います。

結果として、川から海へとごみは輸送されるのですから、家の周りの清掃や、川遊びついでにごみを拾って帰るだけでも海洋ごみ問題の解決に貢献していることになります。

おわりに

先日流れた「スターバックスが全世界でプラスチックストローを廃止する」というニュース。マスメディアに大きく取り上げられ、話題にもなりました。

一方で、「ストローの廃止に本当に環境改善効果があるの?」という反応も多かったように思います。

実は脱プラスチックストロー(紙製ストローへの移行等)は世界で既に始まっていました。

ところが、このような脱プラスチックの動きは、日本でほとんど報じられておらず、驚きをもって迎えられました。

スターバックスの本社があるシアトル市では、2008年には既にレストランやカフェなどが、プラスチック製使い捨て包装容器で食事を販売すること、堆肥化/リサイクルできないナイフ、フォーク、スプーンやストローを提供することを禁止する条例を発表していました。

その他にも、ケニアでのポリ袋禁止令、英国でもストローやマドラー、綿棒の禁止などの報道がここ半年間に駆け巡りました。

つまり、この数年、世界は「脱プラスチック」へ向かって準備をしていたのです。

この脱プラスチックの動きに伴って紙製ストローなど「新しい市場」も生まれることでしょう。それはそれで木材を伐採することになるのでどう折り合いをつけていくかが大切になりそうです。

SDGs(ESG投資)、脱プラスチック、脱炭素など急進的な変化の時代になります。時代は大きく動こうとしています。いずれにせよ、海洋のごみ問題も川のごみ問題もそのほとんどは街の中から起こっています。

身近に少しでも行動したい、どんな状況なのか見てみたい、という方は是非9月15日のWorld Cleanup Dayにご参加ください。

この記事は2018年7月までの情報で執筆しています。情報は日々更新されていますので気になった点はご自身でもアップデートをお願いします。

【文献】
Jambeck, et.al. , Plastic waste inputs from land into the ocean, Science 13 Feb 2015: Vol. 347, Issue 6223, pp. 768-771, 2015.

【ライタープロフィール】
今村和志(いまむら かずゆき)
1981年生まれ、愛知県出身。博士(工学)。
環境NGO、県庁、環境コンサルタント勤務を経て2016年にNPO法人荒川クリーンエイド・フォーラムに入職。
唯一土木工学系でウミガメに関する博士号を持っている。しかし、何のお金にもならない。
河川/海洋ごみ問題の解決に向け、日々頭を悩ませているが対症療法の域を出ず、いつも苦しい思いをしている。

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