水辺まで容易にアクセスできる川なら、生き物持ち帰り用の水は川からすぐに汲み上げて来られるが、昨今の川はそうはいかない場合も多い。屹立した護岸で閉じ込められた川は、勢い余って降りたはいいが登れないということがよくある。
自分が登るのにも一苦労なのに、とった生き物があったらそのバケツも持って上がらないとけない。これはなかなかに苦労する。
前に、大量の網果と車に戻ろうとして2.5メートルはある護岸を前に途方にくれたことがある。しかも真冬、雨の深夜であった。濡れた護岸ブロックにかけたウェーダーブーツが滑り、額を強打して地面に滑落した。額からは血が流れていたが、右手に掴んでいた生き物の入ったバケツは死守した。これこそ川遊び人の矜持(?)である。額の痛さと展望の開けなさを呪いつつも、バケツが無事だったことに誇らしく思ったものだ。結局、車にたどり着いたのはその1時間後であったが。
さて、生き物の持ち帰りに必要な水は、自宅から持参していなければ、現地で汲みあげるしかない。生き物の持ち帰り方は以前にも下記で言及した。しかし、前述した様な状況では、水をたっぷりと入れたバケツを持って上がるのはほぼ不可能だ。
そんな時、あると便利なのが海釣りをする人にはお馴染みのこのバケツだ。
バケツの持ち手に丈夫で長いナイロンのロープがついており、等間隔に結び目がある。これを水面に向かって投げ入れる。
縁に重りが入っていて、水面で入り口が倒れるようになっており、簡単に水が入る。そして引っ張り上げるのだ。
これを繰り返せば、苦労して水辺にまで降りなくとも、簡単に持ち帰りの用の水を確保することができる。
水辺を前にした時は興奮して入っていくが、そのあとのことにはあまり思いが及ばない。楽しさに我を忘れる前に、後先のことを一度冷静になってみる必要がある。自戒も込めて。
川遊びマップ編集長
伊藤 匠