ワンドって知ってます? ワンド。僕らは普通に使ってる言葉ですが、一般的ではないかもしれませんね。
川の水量が増えた時に、本流から溢れた水が作る大きな水溜りや入り江のように岸をえぐって作られた氾濫原地形のことです。多くは止水域で、河畔林などに覆われていて、川本流とはまた違った趣があります。
さながらジャングルやマングローブ林の様相を呈していたりするものです。ワンドには多くの生き物が棲んでおり、生物多様性に取って極めて大切な地形なのです。水辺の生き物の多様性は景観の多様性と比例しますから。しかし、近年では直線的で画一的な河川改修によって氾濫原そのものが姿を消し、ワンドもなくなりつつあります。一方、希少生物の保護のためにワンドを守る活動も活発になりつつあります。
ワンドを探すには、川沿いを車で走ってそれらしいところがあれば降りていく、という方法もいいのですがあまり土地勘のないところは事前リサーチが重要です。
Googleマップで地図と航空写真をを見比べながら探します。ただ、地図と航空写真では作成・撮影日が異なるので水の流れはほとんど一致しないので注意が必要です。水色じゃないのに水がたまってたり、水辺のはずなのに陸地になっていたり。要はワンドが形成される氾濫原とはそういうもの、ということですね。
それでもある程度のあたりをつけておいて、何箇所が巡ってみると、中々に怪しげなワンドに出会えたりします。
河畔林や周囲の植生が水面に覆いかぶさり、まるで魚付き保安林のような役目を果たしています。木陰を作り、虫などを供給し、地面からの養分の入った水を注ぎ、流れを緩やかにし、隠れ家と産卵場所を提供します。陸地と水辺の境は曖昧で判然としていない方がいい。その曖昧な部分こそが生き物の多様性に重要です。
まだ源流部の冷たい雪解け水が流れていて、水温は低いのですが、色んな生き物が見つかりました。
暖かい季節になったらまた来たいです。違う生き物たちに出会えることでしょう。それまで、このワンダーランドのように楽しいワンドがなくなっていないことを祈りつつ。
伊 藤 匠