今日もガサガサ日和 Vol.65 アカザを獲って飼育する

2019年11月1日(更新日:2020年6月22日)
ガサガサ

飼う為にガサガサする

ガサガサをやる人たちの中にもいろいろなタイプがあります。

とりあえずなんでもいいから獲りたい人、獲った生き物を食べたい人、獲った生き物を飼いたい人。

僕は完全に最後の飼いたいタイプ。飼えないなら獲りたくない。

この連載「今日もガサガサ日和」で、獲った生き物を持ち帰る方法に言及した記事がいくつもあるのはそのためです。

獲った生き物はどういう生態をしているのか、自宅でゆっくり観察したいのです。

中上流水槽にいる魚とは

我が家には幾つか飼育水槽があって、今はそれぞれテーマを持っています。

上流水槽、中流水槽、水路水槽等など。

この中で今一番私が目をかけてる?のが中上流水槽。

この夏に獲ってきた魚が飼育されています。

メンツはオヤニラミとニシシマドジョウ。

どちらも上中流の川でみられる魚で、この水槽にいるのは同じところで獲った個体ではありませんが、同じようなところで獲れます。

比較的水質が良く水温の低い川で、川底は砂礫、水際にヨシなどの注水植物が群生しているような川ですね。

水槽は必然的に獲れた環境に似てきます。

生き物たちがそういう飼育環境を好むわけですから。

自分で獲ってくるとどんな環境を好む生き物なのかわかるのがいいですよね。

ペットショップで買ってくるとそうはいきません。

アカザを探していざ川へ

 

このようなところで獲れる別の魚に「アカザ」がいます。

あまり馴染みのない名前の魚ですが、日本固有種で、中々に面白いの顔の魚です。

今回はアカザをこの水槽の仲間に入れたい、と思い、川へと繰り出します。

体長はだいたい7、8センチくらいのナマズの仲間。

八本のヒゲを有して頭は真ん中が凹んでいます。

体色は個体差あるものの赤黒いものが多い気がします。

水面が白く波打つくらいの比較的浅い瀬の、大きな石の下に潜んでいます。

夜行性で石と石の間を泳ぎ回りながら、川虫などを食べているのです。

ですから、人の手で抱えられるくらいの石が瀬にゴロゴロしている場所を狙います。

獲るには石の下流側にタモアミをしっかりと設置し、石をひっくり返したり、川底をかき混ぜます。

すると驚いたアカザがタモアミに入るという具合です。

アカザ、獲れる

ガサガサ始めて10分くらいでアカザが捕れました。

腰を曲げて石をひっくり返しながら川の中を歩くのは中々キツイので、早々に入ったのはよかったです。

平均的なサイズ。

ブサカワ具合がたまりませんね。

アカザが獲れる川では、ガサガサしているとカワゲラやトビケラの幼虫など、色々な川虫も獲れます。

アカザはそれらをエサにしています。

逆に言うと、これらの川虫が獲れない川にはアカザはいないと言えます。

立て続けにアカザ獲れる

アカザは他の在来の魚と同じく数を減らしており、すぐに大量に捕まる魚ではありません。

良好な自然環境度を維持している川の指標生物にもされており「アカザの棲む清流」などとシンボリックに使われたりもしています。

環境省のレッドリストにも記載があり、貴重な魚と言えましょう。

ですから、よく知る川で、ものの30分ほどで4匹も獲れてテンションが上がります。

アカザの棘には毒がある

アカザを捕まえる上で注意すべきは、アカザの背びれと胸びれには毒があるということ。

触るときは刺されないように気をつけなければいけません。

と、どの図鑑や解説書を見てもそう書いてあります。

しかし、私はこれまで素手で触っても持っても刺されたことがなく、誇張しすぎだと思っていしました。

しかし!

ある日仲間内でそんな話をちょうどした後に、バケツから飛び出したアカザを元に戻そうと体を横から親指でつついたら、刺されました。

爪と肉の間で、重い鈍痛のような痛みが走り、脈打つ度に大量に出血しているのではないかと思われるほど、ズキズキ痛みます。

実際は出血はさほどありませんが、10分くらいは痛みが続きます。

ハチにさされた時と同じような痛みですね。

滅多なことがなければ刺さないと思いますが、皆さんもアカザを獲る時は油断してはいけませんよ。

アカザの顔は巨神兵に似ている

さて、アカザについて前々から思っていることは、アカザの顔って、『風の谷のナウシカ』に出てくる巨神兵の顔に似ているということ。

映画のクライマックスで、群れで突撃してくるオームを口から吐き出す光線で殲滅しようとする場面。

あの顔、口に似ているんですよ。

アカザのヒゲが巨神兵のモゾモゾと動く牙?に見えてしょうがない。

ブサカワだけでなく、背びれから脂びれ、尾びれにかけて広がって太くなっていく曲線がたまらなく美しいですよね。

アカザを飼育する

獲れたうち、二匹だけ持ち帰って飼育することにします。

もちろん、オヤニラミとニシシマドジョウがいるあの中上流水槽です。

アカザは夜行性で、見えても忍者のようにすばしっこくて鑑賞向きではないとされています。

確かにその通りだと思いますが、私の水槽では、スペースの関係上石をあまり入れていないので、安心して隠れるところがない為か結構泳ぎ回っています。

なので、観察できて楽しいです。

エサは万能エサの冷凍赤虫をあげています。

他の魚に取られないように照明を落としてから給餌しているので食べているところはまだ見れていないのですが、翌朝観察するとお腹がパンパンになっているのでちゃんと食べていてくれているようです。

魚を混泳させて飼育する際は種類ごとに食べ方や生態が違う為、食いっぱぐれる種が出ないように工夫が必要です。

守るため為には知ることが重要

これは私の持論ですが、生き物を守るには生き物についてよく知る事が大切です。

本の知識だけ詰め込んでも生きた知識にはなり得ませんし、本当に知ったことにはならない気がします。

「かわいそうだから逃がしてあげましょう」

よく耳にするフレーズです。

命を大切にする、生き物を慈しむ心はよくわかりますが、それだけでは守れないと思うのです。

子どものころから生き物に接し、親しむことでより理解が深まるし、生きた知識が身に付きます。

獲って飼ってみても死んでしまうかもしれない、恐らく死んでしまうでしょう。

しかし、子どもから生き物が死ぬのだということを遠ざけてはいけないと思うのです。

だって全て生き物は死ぬのですから。

どこにいるか考え、どうやったら獲れるか考え、どうやったら飼えるか考え、なぜ死んだのか考え、次に生かしていく。

身近にいる小さな生き物たちはそれを学ぶにはとてもいい。

もちろん、必要以上に持ち帰らないなどの配慮が要るのは言うまでもありません。

そうやって生き物を知った子どもが、将来、直接にしろ間接にしろ生き物や自然環境を守る言動をとったならばきっと良い効果を生み出すことでしょう。

だって、こんなにも多様な生き物が川に棲んでいると知ったら、川遊びが楽しくて仕方なかったら、川を壊そうだなんて思わないでしょ?

川遊びマップ 伊藤 匠

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