川や池、水路など水辺に出かけて最も見落としやすいもの。それは水草でしょう。しかし、水草にも注目してみるともっと奥深い水辺の魅力を感じられます。
生き物の視点で考えてみても、水草は極めて重要です。生き物の出す二酸化炭素を吸収し、酸素を生み出します。水質や土壌を浄化し、草食生物の食料となり、産卵床となり、隠れ家となり、休み場となります。水草は生き物と水質とそれぞれ互いに複雑に関係し、水辺という生態系を形成しています。完全に水中に沈む水草、半分だけ沈む水草、水面に浮かぶ水草、水底に根をはる水草。
このように様々な形態をとる水草は、各種が生息できるテリトリーがバラエティーに富んでいなければなりません。ゼロや100かという水深では中間に生きる水草は絶えてしまう。その環境に適応できる水草一種類に占領されてしまう。水草は圃場整備や護岸工事の影響を真っ先に受け、そして生き物たちへと影響するのてす。
私も以前はさほど水草に関心がありませんでした。しかし、ガサガサで生き物たちを追いかけるにつれ、生き物と水草には密接な関係性があることに目が向くようになったのです。殆ど素人の域を出ないのですが、ガサガサに出かける度、水草にも注意を払うようになりました。
我が家のベランダには「メダカ池」と呼ばれるプラ船水槽があります。庭に池を作るのが夢ですが(笑)、マンション暮らしではこれが限界。採集してきた水草はここで育てています。流行りの「ベランダー」の水草Ver.とでもいいましょうか。
通常のフィールドでは水辺は上から覗きます。水槽では普段見られない水の中を横から眺められるという特別感はありますが、フィールドと同じ感覚を得られるのはやはり上から覗く「池」が最適です。では我が家のメダカ池で繁茂する水草の一部をご紹介。自己採集か、県内採集したものの株分けです。
我が家のベランダは午前中は最高の日当たり。今夏猛暑の日差しは水温上昇を招き、多くの生き物が犠牲になってしまいました。そこで、ゴーヤーを植えて緑のカーテンを作り、スポンジフィルターでエアレーションを起こし、葦簀で直射日光を遮ります。
あと、メダカの孵化用、成長用の睡蓮鉢には田んぼの土が入っており、ここにも数種類の水草が。田んぼの土が入っている効果かどうかわかりませんが、メダカ池より2度ほど水温が低い。
水草が繁茂する夏場は水槽はても賑やか。メダカ池にはメダカ、モロコ、モツゴ、タナゴ、ドジョウ、フナ、ヌマエビなどの生き物が棲んでいます。日中はメダカしか姿を見せませんが、夜観察すると色々と顔を出します。夜のメダカ池観察は私の日課でもあります。機会があればご紹介しますね。
屋内の水槽で水草を育てようとすると、それなりの照明をあてないといけませんが、屋外水槽ならさほど心配はないと思います。水槽の底面に土や砂を入れる方法もありますが、そうすると特定の種に占拠されてしまう可能性があるので、種ごとに鉢に入れています。こうすることで狭スペースでも多様性が保てます。
ガサガサで生き物捕獲に疲れたら、ちょっと静かに水辺を眺めてみましょう。別の世界が見えてきますよ。
伊藤 匠