オヤニラミ徹底解説! ~生態や習性、飼育方法や病気の種類など~

2018年6月28日(更新日:2023年3月6日)
川遊びネタ

オヤニラミという魚をご存知ですか?

肉食性の淡水魚で、日本の在来種です。

インパクトある目玉模様や婚姻色の美しさなども魅力ですが、雄親が子育てをするというユニークな習性なども魅力です。

日淡(日本の淡水魚)の愛好家にも人気のあるオヤニラミの生態から特徴、飼育方法、病気の種類、入手方法まで、徹底的に解説します!

オヤニラミの魅力 ~生態や特徴、習性など~

岸辺近くの川底を優雅に泳ぐオヤニラミ

オヤニラミの生態と寿命

オヤニラミはスズキ目ケツギョ科の淡水魚で、日本の在来種です。

自然分布している地域は中国地方と四国、九州の一部。近年ではこれ以外の地域でも移入分布が確認されています。

河川の中流や下流の本流・支流に生息します。水草が多く、流れの緩やかなところを好みます。

肉食性で、エサは小型の水生昆虫や小魚、川エビなどの甲殻類。

寿命は約5年ほど。

成魚の平均的なサイズは10cm前後ですが、大きい個体だと15㎝を超えることもあります。

オヤニラミの特徴

オヤニラミの外見上の特徴は、なんといってもエラブタの後端にある目玉のような模様です。「眼状紋」(がんじょうもん)といい、本物の眼よりもやや大きくて大変目立ちます。

この眼状紋を持つ魚は、他にベラやチョウチョウウオ、スズメダイなど小さな魚に多く、その理由には諸説ありますが、防御のためになんらかの役割を果たしているのではないかと言われています。

エラブタの後端に、青い眼状紋

オヤニラミの性質

オヤニラミは肉食魚なので、非常に攻撃的な性質を持ちます。縄張り意識が強く、侵入者に対して攻撃を仕掛けます。

特に繁殖期になると、卵や稚魚を守るためにさらに攻撃性が増します。

一方で、臆病で神経質な面も持ち合わせており、気の強い魚と一緒だったりすると石の陰などに隠れて出てこなくなることも。

人になつく性質もあり、指を鳴らすと寄ってきたり、ピンセットから餌を食べたりすることもあるので、心の交流さえ感じられるかもしれません。

攻撃的な気性と臆病な気質、そして人なつっこさ。そんなツンデレな性質は、たまらない魅力です。

オヤニラミの習性

オヤニラミの習性は、石のくぼみや筒状の物の中に隠れることです。

川の中に沈んでいる空き缶を拾い上げるとオヤニラミが隠れていることもあります。

また、オヤニラミは雄が卵や稚魚を守ります。卵や稚魚を狙ってやってくる小魚や水生昆虫などを雄親が追い払い、稚魚が自力で泳ぎまわれるようになるまで懸命に守り続ける、子煩悩なパパなのです。

オヤニラミという名前の由来

どうしてオヤニラミという名前になったのか、その由来には諸説あります。

激しい攻撃性と、雄親が卵や稚魚を保護する習性から、「親がにらみを効かす」というところから「オヤニラミ」となった、という説。

あるいは、卵や稚魚を守るためには親でもにらむ、という意味合いで「オヤニラミ」っと名付けられた、という説。

また、地方によっては「ヨツメ」と呼ぶところもあります。これは、エラブタの後端にある目玉のような模様からきています。

絶滅危惧種と移入種問題

オヤニラミは生息地の開発や環境の悪化、ブラックバスなどの外来種による食害などの影響で生息数が減少しており、環境省レッドリストの絶滅危惧1種に指定されています。

自治体によっては天然記念物に登録しているところもあります。

しかし、一方で、国内の他地域に放流されたオヤニラミが繁殖し、移入種問題も生じています。

いくら絶滅の恐れのある稀少種とはいっても、本来の生息地ではないところで繁殖してはその地の生態系を歪めてしまいます。

現在のところ、移入分布が確認されているのは東京都、愛知県、滋賀県です。

滋賀県ではオヤニラミを指定外来種として扱い、放流の禁止や飼育の届け出などが定められています。

オヤニラミを飼う

必要なグッズ

既に淡水魚を飼育されている方なら、一通りの道具はそろっていると思います。

新しく飼い始める方の参考に、オヤニラミを飼うために必要なグッズをまとめてみました。

【水槽】
 
オヤニラミはなるべくなら他の淡水魚と混泳させず、単独飼育がいいです。その理由はまた後で説明します。
 
単独飼育の場合は、水槽は45cmあれば十分でしょう。
 
もし混泳させるなら、水槽は60cm以上のものを用意しましょう。
 
ただし、60cm水槽に水を入れると相当な重量になるため、一般的なラックや棚の上に置くと重みに耐えられません。専用の台も購入する必要があります。

【底砂】
 
底砂は水槽の水質を維持するために大きな役割を果たします。
 
水槽に敷いた底砂にバクテリアが住み着くことで、自然の川と同等とまではいかなくても、魚のフンやエサの食べカスといった有機物を分解してくれるのです。
 
一般的に大磯砂がよく使われています。
 
大磯砂のメリットは、ホームセンターや園芸用品店などで手軽に入手でき、しかも安いこと。また、汚れてきても洗いやすく、使いやすいという利点があります。
 
一方で、大磯砂は養分を含んでいないため根から栄養分を吸収するタイプの水草は育ちません。
 
大磯砂を使うときは、根を張らないタイプの水草(マツモなど)を選びましょう。

【ろ過装置とエアレーション】
 
オヤニラミは水のきれいな環境を好みます。そのため、水質をきれいに保つのに、ろ過装置は必須です。
 
水槽の容量に対して、ろ過能力のやや高いろ過装置を選びましょう。
 
また、オヤニラミは酸欠に弱いため、エアレーションも必須です。
 
オヤニラミは肉食魚であり、生き餌など有機物の含まれたエサの食いカスが腐りやすいために、水槽の水質が悪化しやすいという問題があります。
 
せっかくろ過装置で水質をきれいにしても、食いカスのせいで水質が悪化すると、今度はろ過装置のバクテリアが死んでしまい、悪循環になってしまいます。
 
水質維持のためにもエアレーションは欠かせません。
 
ろ過装置もエアレーションもペットショップや通販で手軽に購入できるので、水槽の大きさや、装置の性能、騒音などを考慮してご自宅のアクアリウムに合ったものを設置しましょう。

隠れ家と水草
 
隠れ家があるとオヤニラミは落ち着いて過ごせます。
 
川の石や流木などを組んで隠れ家を作ってやると、アクアリウムとしての見栄えもよくなります。
 
また、水草がなくても飼育は可能ですが、あった方が水槽の環境も安定しますし、オヤニラミにとってちょっとした隠れ場所となってストレスを減らせます。
 
マツモはペットショップや通販で入手でき、初心者向けで育てやすいのでおすすめです。

【エサ】
 
オヤニラミは肉食性の淡水魚なので、それに合わせたエサを用意しましょう。
 
メダカや川エビ、コオロギなどの生き餌などの他に、冷凍アカムシや、熱帯魚用のクリル(凍結乾燥させたオキアミ)、カーニバル(肉食魚の稚魚から成魚までの栄養バランスを考えた飼料)
 
同じエサだと飽きて食べなくなることもあるので、時々変えてやります。

混泳の注意点

オヤニラミは肉食魚なので、混泳は避けた方が無難です。

ヨシノボリや川エビなどのようにオヤニラミの口に入るサイズの生き物は、エサとして食べられてしまいます。

コイやタナゴ、ドジョウなどは食べられる心配はあまりありませんが、オヤニラミは縄張り意識が強く攻撃性が高いので、攻撃の対象になる可能性があります。

また、オヤニラミ同士でも喧嘩になります。

もし混泳をさせるのであれば、60cm以上の大型水槽に、神経質なオヤニラミが落ち着いて過ごせる隠れ家を用意しましょう。

川遊びマップ編集部の水槽で流木を隠れ家にするオヤニラミ

水槽のお手入れ

【水替え】
 
水替えは、2週間に1回程度の頻度で行います。
 
一度に水槽の水を全部入れ替えるのではなく、1/3ほどを汲みだして捨ててから、カルキ(塩素)抜きをした新しい水を入れます。
 
カルキ抜きの方法は、バケツに水を汲んで2~3日ほど放置します。急ぐ場合はハイポなどの中和剤を入れて数分ほど置くと、カルキが抜けます。
 
大型水槽ではカルキ抜きしなくてよい場合もあります。
 
川遊びマップ編集部にも大型水槽がありますが、古い水を1/3ほど汲みだしてから、カルキ抜きせず水道水をそのまま追加しています。水の全体量が多いので、この程度のカルキでしたら薄められて悪影響を及ぼさないからです。

【水槽の掃除】
水槽の底にたまった食べカスやフンなどの汚れは、大きめのスポイトを使うと楽に吸い出せます。
 
水槽側面にはコケがつきやすく、そのまま放っておいてもオヤニラミに害はありませんが、アクアリウムの見映えが低下します。
 
そのため、ピカピカのきれいなアクアリウムを鑑賞するには、コケ対策が必須です。
 
飼い主の手間が省けて楽なのは、やはり石巻貝。ペットショップや通販で手に入ります。数匹入れておけば、水槽の側面についたコケをきれいに食べてくれます。
 
ただ、石巻貝は、ひっくり返ると自力で起き上がることができません。もし石巻貝が水槽の底に落ちていたら、すぐに助けてあげてください。そうしないと死んでしまいます。
 
石巻貝でも取り切れないコケの汚れが目立ってきたら、水槽にブラシを入れて、そっとコケをこすり落としましょう。
 
川遊びマップ編集部の水槽にも石巻貝がいますが、側面の四隅にはどうしてもコケが残りがちで、ときどき細長いブラシで磨いています。ブラシが石巻貝にぶつかって落としてしまってはいけないので、いつも密かに緊張します。

オヤニラミの繁殖

オヤニラミは生後2~3年ほどで10cm前後に育ち、繁殖できるようになります。

4月下旬から9月頃が繁殖期で、自然下でのピークは5月頃です。

繁殖期を迎えると、オスの体色は黒ずんで、ヒレに鮮やかな水玉模様が現れます。メスは体つきが丸みを帯びて、お腹がふくれてきます

自然界ではヨシやアシといった植物の水中の茎などに産卵しますが、水槽という環境下では、ろ過装置のホースや隠れ家用の木の枝などに産卵することが多いようです。

孵化するまでは雄親が面倒を見ますが、場合によっては卵を食べてしまうことがあります。そういう場合は卵を別の水槽に隔離して孵化を待ちます。

稚魚が孵化したら、しばらくは雄親が稚魚の集団を守っています。数日ほどで稚魚の卵黄が吸収され、エサを求めて水槽内に散っていきます。

そうすると他のオヤニラミに食べられてしまうおそれがあるので、その時期が来たら稚魚だけ別の水槽に移してやりましょう。

稚魚のエサにはブラインシュリンプを毎日与えます。少し大きくなってきたらイトミミズや冷凍アカムシ、テトラプランクトンフードなどの餌に移行して育てます。

オヤニラミの病気

健康なオヤニラミ

病気を疑うのはどんな時?

オヤニラミの様子が変だと感じたら、病気を疑ってみましょう。

普段より元気がない場合は、見た目に異変がなければ少し様子を見てみましょう。餌をちゃんと食べていれば心配ないこともあります。

しばらく元気がない場合は、水替えをしてみたり、隔離した水槽で1週間ほど塩水浴させると効果が期待できます。

何かに身体をこすりつける行動をする場合は、寄生虫がついている可能性があります。

体表面に普段と違う何かがついている場合は、細菌やカビにやられているかもしれません。

主な病気の種類と対処法

参考までに、主な病気と対処法をまとめました。

症状が重そうな時や様子が気になる時は、購入したペットショップに直接相談したり、淡水魚に詳しい獣医さんに相談して下さい。

【水カビ病】
症 状:体にふわふわした白い綿のようなものがついて、徐々に弱っていく。
原 因:外傷部分に付着した水カビ
治療例:メチレンブルーで薬浴と塩水浴(ポイント1.「塩水浴について」参照)の併用。

【エラ病】
症 状:エラの機能不全により呼吸困難になるため、水面近くでパクパクと酸素を求めたり、活性度が失われて水底で元気なくたたずんでいたりする。
原 因:寄生虫類や細菌類、カビ類など
治療例:寄生虫類…グリーンFで薬浴と塩水浴(ポイント1.「塩水浴について」参照)の併用。
細菌類…観賞魚用パラザンD(観パラD)で薬浴と塩水浴の併用。
カビ類…メチレンブルーで薬浴と塩水浴の併用。
寄生虫(ダクチロギルス)の場合は、観パラDと塩水浴の併用。

【松かさ病】
症 状:ウロコがはがれてきて、松ぼっくりのように逆立つ。目玉も飛び出してくることがある。
原 因:細菌感染や肝機能異常など。
治療例:メチレンブルーで薬浴と塩水浴(ポイント1.「塩水浴について」参照)の併用。

ポイント1. 塩水浴について
 
淡水魚が弱ったときは塩水浴がいいと言われおり、病気が軽いうちは塩水浴だけで回復することもあります。メチレンブルーや観パラDなどの薬剤と併用するとより効果が期待できるようです。
 
0.3%~0.5%の濃度の塩水(水1リットルにつき塩3~5g)を用意して、1週間ほど塩水浴をさせると弱った体力が回復してきます。ちなみに60cm水槽の容量は約60リットルなので、ここに塩を入れるとしたら180~300gの計算になります。

 

ポイント2. 病気個体の隔離
 
いずれの場合も、病気の個体を隔離して治療しましょう。元の水槽の水は、単独で飼っていた場合はすべて入れ替えましょう。
 
混泳させていた場合は、半分ほどの水を入れ替えて感染拡大を防ぎましょう。

 

オヤニラミに元気でいてもらうためには

オヤニラミに限ったことではありませんが、魚の健康のためには、水槽の管理が大切です。

・水質管理をきちんとする
ろ過装置を使い、水替えも適宜行って、水質の悪化を防ぎましょう。水質の悪化は病原菌を繁殖させ、様々な病気の元になります。

・水温の変化を抑える
水槽の水温は室温の影響を受けるため、日中と夜間とで変化します。自然の河川よりも短時間での水温変化が大きく、それが淡水魚にとってはストレスになります。そのため、水温がなるべく一定になるよう工夫しましょう。

水槽の環境を適切に管理して、オヤニラミに快適な環境を提供してあげたいものですね。

オヤニラミを入手する

オヤニラミを飼いたいけど、どこで手に入るんだろう?と思っている方も少なくありません。

淡水魚の愛好家だけでなく、中には、淡水魚を飼うのは初めてだけど、オヤニラミを飼ってみたいという方もいらっしゃいます。

オヤニラミの入手方法は、採集と購入の2つの方法があります。

オヤニラミを川で採集する

【採集の前に】
オヤニラミは中国地方と四国、九州の一部に自然分布しています。

最初の章で説明したように、オヤニラミは環境省レッドリストの絶滅危惧種に指定されており、自然分布している地域での採集はやめましょう。

しかし、一方で、国内での移入種問題も起きています。自然分布地域外に放流されたオヤニラミが繁殖し、分布している地域があるのです。

こうした移入先の地域ではオヤニラミは指定外来種として扱われていたりしますが、採集は禁じられていません。

ただ、滋賀県の場合は、例えばオヤニラミを飼育する際には届け出が必要など色々と規制があるので、採集前に地域の状況をよく確認しましょう。

いずれにせよ、どの地域であってもオヤニラミを河川に放流してはいけません。

【オヤニラミの採集】
オヤニラミを川で採集するのは意外に簡単です。

オヤニラミは石のくぼみや、空き缶の中などに隠れる習性があり、巣に対する強い執着があります。

隠れ家としている空き缶を自ら引き上げても、逃げ出したりせず中に入ったままなのです。

また、ガサガサでも採集できます。水際の植物の根元にタモ網を入れて、足でガサガサと蹴り回して網に追い込みます。

★ガサガサでオヤニラミを採集する参考に★

オヤニラミを購入する 販売場所と価格

オヤニラミを採集できない場合は、ペットショップや通販で購入できます。

【ペットショップで】
淡水魚専門の販売店や、淡水魚を扱っているペットショップでも販売されている場合があります。熱帯魚の販売店で扱っていることもあります。

【ネット通販で】
淡水魚を販売しているお店では、ネット通販に対応しているところもあります。アマゾンや楽天などでも購入できます。

通販を利用の場合は、届き次第、袋を開封せずにオヤニラミの健康状態を確認しましょう。
万が一死んでいた場合、袋が開封済みだと死着補償の対象外になります。

【平均的な価格】
サイズや販売店にもよりますが、価格帯は300円位から数千円位といったところ。
800円~2000円前後の価格が多いようです。

採集後・購入後の注意点:「水合わせ」

川で採集した、あるいはショップで購入したオヤニラミが自宅に到着したあと、すぐに水槽に入れてはいけません。

慌てずに「水合わせ」をして、オヤニラミを新しい環境に慣らしましょう。

水合わせのやりかた
 
オヤニラミの入った袋を1時間程度水槽に浮かべて、袋の中の水温と水槽の水温とを合わせます。
 
水の温度が同じになったら、今度はバケツに袋の水ごとオヤニラミを放します。そして、バケツの水を少し捨てて、捨てたのと同じだけ水槽の水を入れます。これをゆっくり時間をかけて3回ほど繰り返します。
 
最後に、オヤニラミを水槽に入れてやります。この時、バケツに残った水は水槽には入れません。病気や寄生虫のリスクを減らすためです。

 

最後に

オヤニラミには古代魚を思わせる風格が。

その姿の美しさ、ユニークな習性などから、淡水魚ファンのみならず多くの愛好家がいるオヤニラミ。この魅力的な人なつっこい魚に、癒されてみませんか?

オヤニラミの書籍紹介

もっと詳しく知りたい方は、本で調べてみるのもいいでしょう。
日本の川魚を取り扱ったこれらの本に、オヤニラミも掲載されています。



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★オヤニラミたちの生き餌を求めてガサガサ★

★オヤニラミが川遊びマップ編集部の水槽に来た日★

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