釣りをしつつ同時に魚も殖やす方法としてC&R区間が注目され、現在、全国で50ヵ所ぐらいあるようである。魚を殖やすだけなら禁漁区にすればいいが、そこで釣りもしながらとなると、C&R区間にならざるを得ない。これまで多くのC&Rで釣りをしてきたが、成魚をドカドカ放流して釣らせる単なる持ち帰り禁止の管理釣り場のC&R区間とか、放流も監視もない名ばかりC&Rもあって、実態は一様ではない。
私が知る限り、在来渓流魚を殖やすという明確な目的があり、魚も増殖し同時に釣り人も増えているのが岐阜県郡上市の石徹白川(いとしろ)である。1999年から活動が始まった。最も力を注いだのが漁協の理解である。釣った魚は食べてあたり前、食べてこそ成仏すると考える魚食民族からすれば、なぜ釣った魚を逃がすのか、さらに逃がすための魚を釣りに人が集まるのかという疑問は当然である。最初から漁協の理解が得られるはずもなく、釣り人を殖やすためのイベントの開催、マナー向上のためのゴミ拾いなどの地道な10年をへて、C&R区間には自然繁殖したアマゴやイワナがいつでも竿を曲げるようになった。
同様に自然繁殖で成功したC&R区間に高知県中野川があるが、四国山脈の山中という地もあって集客に苦戦しているのに比べて、石徹白が成功したのは名古屋という大都市から高速で2時間という地の利があるからだろう。魚も殖えたが、石徹白へ行けばいつでも魚と遊ぶことができるという安心感、信頼感が釣り人も殖やしている。
posted by 石垣尚男
【石垣尚男】
テンカラ歴は30年以上。大学で教鞭をとりつつ、渓流シーズンになると美形魚を求めてテンカラザオを振る。国内のみならずアメリカなど海外でも活動し、テンカラの普及に努めている。著書に『超明快 レベルラインテンカラ』(つり人社)等がある。DVD『テンカラ大王のアタリパターン解析 テンカラHit Vision』(つり人社)にも出演。
ところで、2016年7月から京都、愛知、群馬の漁協で遊漁券がネットで超簡単に買える『つりチケ』がリリースされたの、知ってました?
これで、朝早く行って店が開いていなかったり、販売所に寄る時間が余分にかかってやきもきすることもなくなり、釣りに時間一杯使えますね。